新卒の厳選採用について思うこと

パナソニックやクボタで進む新卒採用の削減について、27卒・28卒の皆さんが今どう準備したらよいか、当塾から少しお話しします。

·面接対策新卒面接

新学期が始まり、学校の方も忙しくなってきた頃かと思います。就活生の皆さんにとっては、面接や筆記試験に追われる毎日だと思います。民間企業だけでなく、公務員試験もこれからが本番です。そんな中で、少し気がかりなニュースが出ました。

新卒採用が「厳選採用」に変わってきています

2026年4月22日に公開された河合薫氏のYahoo!ニュース エキスパート記事で、新卒採用の動きが取り上げられています。

パナソニックホールディングスは前年度より100人減らす予定だそうです。クボタは前年の約4分の1の60人、サントリーは26年度比で8%減、関西みらい銀行は20%削減と報じられています。採用予定数を「増やす」と答えた企業の割合も、25年卒の32.0%から、26年卒で29.4%、27年卒では23.0%まで下がっていると産経新聞が報じています。数字として、はっきりと下向きの流れです。

最近、当塾の模擬面接に来られる27卒の方からも、「去年の先輩より空気が厳しい気がします」という声を何度も聞きました。その感覚は、気のせいではないと思います。

なぜ採用を絞るのか

これは景気の話ではないと思います。景気の問題であれば数年で戻りますが、今回の動きは戻らない種類のものに見えます。

理由の一つは、生成AIです。これまで新卒1〜2年目の方に任せていた仕事の多くは、資料作成や議事録、基礎的な調べもの、定型的なメール対応などでした。どれも、生成AIがいちばん得意にしている領域と重なります。1年目の社員が1年かけて覚えていた仕事が、AIに投げれば数分で返ってくる。そのような状況で、採用数をそのまま維持する理由を経営の側から説明するのは、難しいのだと思います。

もう一つは、育成の前提が崩れてきたことです。日本の新卒採用は、長らく3〜5年かけて戦力に育てる運用で回ってきました。長く在籍してもらえることで、育成の投資が回収できる、という仕組みです。ところが、ここ数年は3年以内に辞める新卒の方が3人に1人前後で高止まりしています。河合氏が記事で触れた「入社5秒でマジ退社」は極端な言葉ですが、このモデルが成り立ちにくくなっているのは事実だと思います。

もう一段、経営側の事情もあります。2023年の有価証券報告書の開示拡充以降、採用数や離職率といった人的資本の情報が、投資家の目に直接触れるようになりました。数を採って辞められることは、株主から見ればコスト増にしか映りません。河合氏の記事に出てきた「優秀でないと採用するな」というSBIホールディングス会長の発言は、言葉としては乱暴に聞こえますが、経営の論理としては整合的だと思います。

採用を絞る動きは、一部の不調企業だけの話ではありません。制度(人的資本開示)と技術(生成AI)の変化が重なった結果、ほぼすべての上場企業で合理化される流れになっています。

どう考えるか

河合氏は記事の終わりで、奨学金を受けている大学生が全体の約55%に達するなかで、厳選採用に舵を切った企業は「キャリア形成の道筋」を誰が保証するのかと問いかけています。この問いの重さは、日々学生の方と接している立場からも、よく分かります。

企業の側には、入口を狭めた以上、採った方への育成を以前より丁寧にやる責任があると思います。当塾に来られる学生の方からも、「内定先の研修制度が縮小された」「配属ガチャが露骨になった」という話は、去年と比べて確かに増えました。厳選採用を謳うなら、入った後の配属・育成・キャリアの透明性は、その分だけ引き上げてほしいところです。

ただ、「誰かが道筋を保証してくれる」という前提そのものには、少し留保があります。正直に言うと、終身雇用と育成型採用が機能していたと言われる時代でも、最後にキャリアを作ったのは本人の小さな選択の積み重ねでした。制度が弱くなったからといって、その代わりに国や企業が道筋を敷いてくれる未来は、おそらく来ないと思います。

冷たく聞こえるかもしれませんが、これは学生側にとって救いでもあります。保証を当てにしない分だけ、自分で動かせる変数がはっきりするからです。厳選採用される側に回るとは、「どんな候補者が残るのか」を先に知って、そこに合わせて自分の材料を組み直すこと。それだけのことだと思います。

就活生の皆さんはどうしたらよいか

では、具体的に何を書き換えるか。模擬面接で学生の方と接していて、感じていることをそのまま並べます。

まず、併願社数を増やすより、一社ごとの準備を深めてほしいと思います。採用予定数が減ると、反射的に受ける会社を増やしたくなります。その気持ちはよく分かります。ただ、厳選採用の面接は、1社あたりの深掘りが以前より深くなっています。浅い志望動機を10社に配るより、4〜6社に深く作り込むほうが、通過率は明らかに上がります。当塾の模擬面接の復元を学生の方と見返していても、この傾向ははっきり出ています。

次に、AIを使った経験の語り方です。アカリクが採用担当者に行った調査では、生成AIの活用推進を受けて新卒採用戦略を見直した企業が約9割にのぼり、その見直し理由のトップは「生成AIを活用できる人材を重点的に採用したいから」で66.7%でした。この流れは、面接の質問にもそのまま跳ね返っています。「生成AIをどう使っていますか」「AIに任せられない仕事は何だと思いますか」。こうした質問は、2025年以降、業界を問わず急に増えました。

ここで問われているのは、AIを使った経験の有無ではないと思います。使った上で、自分の頭をどこに使ったか、です。たとえば、ChatGPTで下調べの時間を3時間から30分に短縮したとして、浮いた時間を何に使ったか。AIが出した答えを検算して、どこを直したか。このくらいの粒度で一つか二つ、数字付きのエピソードがあれば十分です。「使ったことがあります」だけでは、AI活用人材を重視する会社の目には、まず残りません。

それから、志望先の選び方についても少し触れます。業界トップ1社と、同業の2〜3番手を併願する、という基本戦略はいまも有効です。ただ、選ぶ順番を、知名度順から「自分の強みが代替不可能な形で活きる会社」順に並べ直してみてください。厳選採用で残るのは、会社から見て「この人でなければ困る」と思われた候補者だけです。同じことは就活生の側にも言えて、「この会社でなければ困る」と具体的に言える状態で面接に入ると、志望動機の言葉に自然と重みが乗ります。

早期選考に寄せすぎないことも、伝えておきたいと思います。早期で動く学生が増えた結果、早期の枠も減っています。早期で手応えを掴んでも、そこで安心せず、通常選考の準備を並行して進める二段構えが、いまの現実解です。早期と通常の両立については、27卒の就活スケジュールと面接準備60日計画のほうで整理しています。

最後に、民間に絞っている方ほど、公務員という選択肢を視界に入れ直してほしいと思っています。人事院の国家公務員採用試験や地方公務員採用は、採用予定数を維持している自治体・省庁が多い状況です。公共セクターは業務効率化が進んでも、民間のように一気に採用を絞る構造にはなっていません。民間一本に絞っていた方が、春先の面接で苦戦して公務員に舵を切り直す動きは、ここ2年でかなり増えています。併願するなら、民間と公務員は評価軸が違いますので、早めに両方の対策を始めたほうが楽だと思います。公務員面接については、公務員面接の対策と頻出質問で扱っています。

面接官の側でも変化があります

学生の側の話が続きましたが、面接官の側でも、評価の尺度が少し動いています。派手な新しい質問が増えたわけではなく、昔からある定番の質問の、重みが変わりました。

たとえば、「学生時代に一番頭を使った経験を教えてください」という質問。ガクチカの変種ですが、「頭を使った」と縛りが入ると、努力量や根性の話だけでは答えが成り立ちにくくなります。問題の構造を自分で定義して、仮説を立て、検証した経験があるか。AI時代に自分の頭で付加価値を出せるかを、短く確かめる問いになっています。

「苦手な人はどんな人ですか」という質問もそうです。候補者の自己認識の解像度と、ストレスへの折り合いを同時に測っています。「苦手な人はいません」と答える方ほど評価は下がり、苦手なタイプを具体的に描いた上で、その人と日常でどう付き合っているかまで話せると、人間関係のトラブルで辞めるリスクが低い候補と見なされます。

「3年後、この会社で何をしていたいですか」も同じです。志望動機の未来側の解像度を問う質問で、抽象的すぎれば企業研究不足、具体的すぎれば現実離れと受け取られます。業務の粒度で3年後を話せる方は、育成投資の回収可能性が高い人材と判定されます。

どれも特別な質問ではありません。ただ、厳選採用という前提が重なった結果、同じ質問なのに通過と不通過の分かれ目が、以前よりはっきり出るようになっています。

終わりに

厳選採用という言葉は、就活生の皆さんにとっては、一見、冷たい響きを持っているかもしれません。採用予定数が減って、競争倍率が上がって、内定の出ない友人が増える。河合氏の記事が映し出しているのは、その輪郭だと思います。

ただ、冷たさの裏側で起きているのは、「どんな候補者を残すか」の尺度が、以前よりはっきりしてきた、ということでもあります。尺度がはっきりすれば、そこに合わせて準備ができます。準備の効きやすい局面だとも言えます。

採用予定数の減少を嘆くエネルギーは、評価軸の変化に合わせて自己PRと志望動機を書き換える作業に使ってみてください。AIを使った具体例を、数字付きで一つか二つ手元に持っておく。民間と公務員、早期と通常を、二段構えで組む。いまの環境でやれることは、この3つに集約されると思います。

厳選採用は、皆さんから見れば確かに試練です。ただ、準備次第で選ばれる側に回れる試練でもあります。一緒に組み直したい方がいらっしゃいましたら、民間企業面接対策コース就活相談・メンタルケアコースで、皆さんの持ち札を、いまの評価軸に合う形に編集し直すところからご一緒します。