地方上級や国家一般職の一次試験が終わり、結果を待ちながら面接の準備に入っている方が多い時期かと思います。模擬面接にも、面接カードを片手に来られる方が増えてきました。
そういう方とお話ししていて、毎年いちばん感じるのが、志望動機を「書き上げたら終わり」だと思っている方がとても多い、ということです。実際の面接は逆で、書いた志望動機を読み上げたところからが本番になります。「それは具体的にどういうことですか」「なぜ民間ではないのですか」と、面接官は一文ずつ掘り返してくる。公務員面接の志望動機は、きれいに書けたかどうかではなく、その後の深掘りに耐えられるかどうかで評価が決まります。
今日は、書いた志望動機を面接でどう守るか、という一点に絞ってお話しします。二の矢・三の矢への切り返し、民間併願をどう伝えるか、面接カードと話す内容をどうそろえるか。模擬面接で実際につまずく方が多い順に、当塾の視点で並べていきます。
時間は、思っているより残っていません
特に国家一般職を受ける方は、準備期間がかなり短いことを先に意識しておいてください。
人事院の国家公務員試験採用情報NAVIによると、2026年度は6月24日(水)の9時に一次合格発表があり、その同じ時刻から面接カードのダウンロードが始まります。人物試験は7月8日(水)から7月24日(金)のうち、指定された日に行われます。発表から本番まで、長い人でも2週間ちょっと。この間に、書いた面接カードを「口で語れる状態」まで仕上げなければなりません。
新しく立派な志望動機を考える時間ではない、ということです。すでに書いたものを、深掘りされても崩れない形に育てる。やるべきはそこに尽きます。
面接官が見ているのは、志望動機の完成度ではありません
そもそも面接官は、志望動機の何を見ているのか。ここを取り違えると、対策の方向がずれます。
2026年度の国家一般職受験案内(人事院)では、人物試験は「人柄、対人的能力などについての個別面接」と定義されています。配点は9分の2を占め、第2次試験では面接の参考にするために性格検査も行われます。つまり問われているのは、正しい知識を答えられるかではなく、人柄であり、人と向き合う力です。志望動機への深掘りも、用意した答えを暗唱できるかのテストではなく、その動機が本人の経験とどこまで地続きかを確かめる作業だと考えてください。
採用する側の事情も、知っておいて損はありません。総務省の調査によると、令和5年度の地方公務員採用競争試験の競争率は4.6倍でした。10年前の平成26年度は7.0倍ですから、筆記で人を絞り込む力は確実に弱まっています。
倍率が下がったなら楽になったはず、と思いたくなりますよね。でも現場の実感は逆です。令和6年度の人事院年次報告書は、一般職試験(大卒程度)の申込者数が過去10年で約3割減り、各府省が事務系・技術系を問わず採用に苦慮していると書いています。採る側が人材確保に危機感を持っているからこそ、限られた面接時間で「この人を本当に採って大丈夫か」を慎重に見極めようとする。人物評価の重みは、むしろ増していると思っておいたほうがいいです。
しかも、足元ではライバルが増えています。人事院の発表によると、2026年度の一般職(大卒程度)の申込者数は26,429人で前年度比3.9%増。2年連続の増加は2016年度以来10年ぶりで、女性の申込者は全体の45.4%と過去最高でした。準備不足のまま深掘りで崩れてしまうのは、この状況では本当にもったいないのです。
「安定しているから公務員を志望しました」という答えが響かないのも、ここに理由があります。採用側自身が、安定だけを求めて入ってきた人の早期離職に頭を悩ませている。安定という言葉は、面接官にとってむしろ警戒のシグナルになりかねません。評価される志望動機の全体像や準備の進め方を先に押さえたい方は、公務員面接対策の完全ガイドを読んでから戻ってきていただくと、この先の話が入りやすいと思います。
「なぜ公務員か」と「なぜここか」は、別の質問です
深掘りでつまずく方を見ていると、原因の多くがひとつに集約されます。「なぜ公務員か」と「なぜこの自治体か」を、一つの答えでまとめて処理しようとしているのです。
この2つは、まったく別の質問です。「なぜ公務員か」は、民間ではなく公的な立場で働く理由を聞いています。「なぜこの自治体(この府省)か」は、数ある公的機関の中で、なぜここなのかを聞いています。前者に「住民の役に立ちたいから」と答えても、後者の答えにはなりません。住民の役に立つ仕事は、どの自治体にもあるからです。
そして面接官は、この2つをわざと分けて聞いてきます。片方しか用意していない方は、もう片方で必ず詰まる。だから志望動機を組み立てる段階で、「公務員という働き方を選ぶ理由」と「この組織を選ぶ理由」を、別々の引き出しに入れておいてほしいのです。これが深掘り対策の出発点になります。
自治体研究も、隅々まで調べ尽くす必要はありません。狙うのは1点だけ。「この自治体が今どんな課題に取り組んでいて、自分の関心とどこが重なるのか」が一文で言えれば十分です。総合計画や予算の重点項目、首長の所信表明あたりに、その手がかりが落ちています。逆に、関心の出発点がどうしても見つからないという方は、これまで時間を忘れて取り組んだことや、人から頼られた場面を書き出すところから始めてみてください。志望動機は、新しく作文するものではなく、すでにある自分の関心を公的な仕事へつなぎ直す作業だと、当塾では捉えています。
深掘りで崩れる人と、崩れない人の差
ここからが本題です。志望動機を語り終えたあと、面接官はほぼ必ず追撃してきます。一の矢(志望動機そのもの)は準備していても、二の矢、三の矢で言葉に詰まる。模擬面接でも、いちばん差が出るのがこの場面です。よく飛んでくる3つを、崩れる答えと一緒に見ていきます。
ひとつ目は、「それは民間やNPOでもできるのでは?」という切り返し。これが最多です。「住民の生活を支えたい」「地域を良くしたい」――どれも立派なのですが、民間企業でもNPOでも実現できてしまう言葉です。ここで「やはり安定していますし、長く貢献できると思います」と返してしまうと、公務員でなければならない理由をひとつも説明できていません。
評価が分かれるのは、民間と行政の役割の違いに踏み込めるかどうかです。「民間は採算の取れる事業に集中します。でも、採算が合わなくても続けるべき仕事がある。過疎地域の見守りのように、利益では測れない領域を担えるのが行政だと考えています」――このくらい具体的に、自分が関わりたい領域まで出せると、言い回しが多少崩れても答えは成立します。大事なのは暗記ではなく、「民間にできて行政にできないこと」「行政にしかできないこと」を自分の言葉で線引きできているか。公務員と民間で面接の評価軸がどう違うのかは、公務員と民間の面接の違いのほうでも整理しています。
ふたつ目は、「地元ではないのに、なぜこの自治体?」。市役所や県庁、特別区を地元以外で受ける方は、ほぼ確実に聞かれます。背後にあるのは「縁もゆかりもないのに、すぐ辞めるのでは」という不安です。
ここで無理に「地元です」をひねり出す必要はありません。特別区人事委員会の採用サイトでは、住所や年齢、学歴は合否に一切影響しないと明記されていて、最終合格者の半数以上が東京都外の在住だと公表されています。出身地そのものは、評価項目ではないのです。面接官が確かめたいのは出身地ではなく、定着して働き続ける見込みのほう。だったら、地元でないなら地元でないなりに、なぜこの自治体に関心を持ったのかを正直に語ったほうが、ずっと強い答えになります。学生時代に訪れて課題を感じた、特定の取り組みに共感した――きっかけは何でも構いません。長く働く理由として筋が通っていれば十分です。
みっつ目は、「希望部署に配属されなかったら?」。「福祉に関わりたい」と熱く語った直後に、「税務に配属されたらどうしますか」と返してくる、三の矢の定番です。公務員はジョブローテーションが前提で、希望どおりの部署に行けるとは限らない。面接官はそれを承知のうえで、希望が叶わなくても腐らずに働けるかを見ています。
避けたいのは両極端の2つです。「どこでも構いません」と志望動機を投げ捨てる答えと、「希望部署以外は考えられません」と頑なになる答え。前者は熱意そのものを疑われ、後者は組織人として扱いにくいと見られます。落としどころは、軸はぶらさず、柔軟さも見せること。「第一希望は福祉ですが、税務でも住民と直接向き合う点は共通しています。どの部署でも住民に近い仕事をしたい、という軸は変わりません」。こんなふうに、希望の根っこにある価値観を別の部署でも追える形にして語ると、一貫性と柔軟性が両立します。
併願は、隠すより認めたほうが強いです
「併願していると言ったら、第一志望じゃないとバレて落ちるのでは」。この不安で固まってしまう方は、本当に多いです。でも、前提から見直したほうがいい。
マイナビの調査によると、公務員を考えている学生の77.9%が民間企業と併願すると答えています。併願理由の最多は「公務員試験に落ちた場合の保険として」で69.5%。つまり面接官にとって、併願は珍しいことでも何でもなく、当然の前提です。8割が併願している現実を、毎年たくさんの学生を見ている面接官が知らないはずがありません。
だから考えるべきは、併願を隠すかどうかではなく、併願していてもこの組織への志望度が高いことを、どう示すかです。
ここでやりがちな失敗が2つあります。ひとつは、面接カードの併願状況欄に民間企業を書いているのに、口頭では「公務員一本です」と言ってしまうこと。書面と口頭が食い違った瞬間、ほかの発言の信頼性まで一気に下がります。もうひとつは、本音だとしても「保険として民間も受けています」と、保険という言葉をそのまま口に出してしまうこと。面接官に「では受かったら民間に行くのでは」と思わせる、自爆型の答えです。
うまくいく方に共通しているのは、併願を素直に認めたうえで、なぜ最終的にここなのかを語れている点です。「民間も受けていますが、第一志望はこちらです。民間も見たうえで、それでも公的な立場で働きたいと考えました」。「第一志望です」と言ってよいかとよく聞かれますが、心からそう思えるなら言って構いません。ただ、言葉だけでは弱いのです。民間も見てなお公的な仕事を選ぶ、その比較の中身まで語れて、はじめて「第一志望」に説得力がのります。嘘で固めるのではなく、事実の中から志望度の高さを示す材料を選んで語る。これが整合性のある答え方だと思います。
面接カードと、話す内容をそろえる
深掘りに崩れない方と崩れる方の、最後の差はここにあります。面接カードと口頭の回答がそろっているかどうか。カードは面接官の手元にあります。書いた内容と話す内容がずれれば、その場で見抜かれます。
先ほども触れたとおり、面接カードのダウンロードは6月24日の9時に始まり、人物試験は7月8日から。書いてから本番まで、2週間ほどしかありません。この間にやるべきは、繰り返しになりますが、新しい志望動機を考えることではなく、書いたカードを口頭で守れる状態にすることです。
具体的には、カードに書いた言葉を、すべて自分の口で展開できるかを確認していきます。たとえば「地域活性化に貢献したい」と書いたなら、地域活性化とは具体的に何を指すのか、なぜそこに関心を持ったのかを、よどみなく説明できる状態にしておく。書いた言葉なのに口で答えられない箇所こそ、深掘りで沈黙する地点です。それから、カードに書いた施策名や事業名、エピソードの数字。緊張すると、書いたはずの固有名詞がとっさに出てこなくなります。声に出して、何度か確認しておいてください。志望動機と自己PR・ガクチカがちぐはぐになっていないかも、見落としがちなポイントです。志望動機で「分析力を活かしたい」と書いたのに自己PRでは行動力ばかり語っている、といったねじれは、カード全体を読む面接官にすぐ気づかれます。
要は、カードのどの一文も「これはどういう意味ですか」と聞かれて答えられる状態にしておく。それが一貫性の到達点です。面接カードそのものの書き方――志望動機欄に何をどう書くか――を詰めたい方は、面接カードの書き方に記入例があります。この記事は、書いたカードを口頭でどう守るか、という側に振っているので、合わせて読んでいただくとちょうど噛み合うはずです。
終わりに
ここまでの話を、ひとことにまとめます。面接官が見ているのは、用意した文章の完成度ではありません。その志望動機が、あなたの経験と地続きで、深掘りされても揺らがないか。だから対策は、より美しい志望動機を書くことではなく、書いた志望動機の「なぜ?」に何度でも答えられる状態を作ることに尽きます。
「民間でもできるのでは」には、行政にしかできない領域を自分の言葉で。「地元でないのに」には、長く働く理由を正直に。「希望部署でなかったら」には、軸を保ったまま柔軟さを。併願は隠さず、整合性で志望度を示す。そして、カードと口頭をそろえる。この5つを、本番までの2週間で声に出して練習しておけば、深掘りはもう怖くないと思います。声に出す練習そのものの進め方は、一次合格後の2週間の練習法のほうで具体的にまとめています。
ただ、正直に言うと、自分の答えが面接官にどう聞こえるかは、一人ではどうしても見えにくいものです。崩れる答えと評価される答えの差は、紙の上では紙一重に見えても、口に出すと露骨に表れます。当塾の公務員面接対策コースでは、採用担当の経験がある講師が面接官の側に回って深掘りを重ね、あなたの志望動機がどこで崩れるかを本番前に洗い出します。完全マンツーマンなので、組み立てる二の矢・三の矢は、あなたの志望先と面接カードに合わせたものになります。書いた志望動機を、深掘りに耐える志望動機へ。よかったら、本番の前に一度、一緒に確かめさせてください。