梅雨入りも近づき、27卒の皆さんは本選考の真っ最中、28卒の皆さんはサマーインターンの準備に入っている頃かと思います。そんな中で、少し考えさせられるニュースを読みました。
AIで就活を進めるのが当たり前になってきました
2026年6月にYahoo!ニュースに掲載された「就活なんてチョロい」中堅大から大手マスコミ5社内定という記事で、生成AIを使った就活の実態が取り上げられています。
記事に出てくる22歳の女性は、自己分析からエントリーシートの下書き、面接の想定問答まで、ほとんどをChatGPTやClaudeに任せたそうです。1000字のES設問に対して、自分で書いた初稿は300字。残りはAIに整えてもらい、想定質問は50個用意して、3次面接まではその想定問答集がそのまま効いたと書かれていました。
これは特別な人の話ではないと思います。同じ記事では、マイナビの調査で2027年卒の生成AI利用率が8割を超えたと紹介されています。当塾の模擬面接に来られる学生の方に聞いても、「ESはまずChatGPTに下書きさせます」という方が、この1年で一気に増えました。もう、使う・使わないの段階は終わっていると感じます。
書類はもう、AIで誰でも一定の水準まで書けます
この流れを、企業の側はかなり正確に把握しています。
同じ記事によると、新卒採用担当の8割近くが「AIで書かれた書類」を感じ取っているそうです。「一晩で20社分のES」を出してくる応募者もいて、AIが書いたと思われる書類で選考を落とした経験のある担当者は6割を超えると報じられていました。一方で、AI活用の明確なルールを決めている企業は1割5分にも満たないとのことです。
ここで起きていることは、はっきりしていると思います。AIで誰でも一定の完成度の書類が書けるようになった以上、書類の出来栄えで応募者を絞ることに、もう意味がなくなってきた、ということです。
記事の中で、SHIFT AIの橋本佳介氏も、書類選考で候補者を絞ることには限界があり、面接などで本人の実力を測る方向に変えていくしかない、という趣旨のことを話しています。実際、書類選考を縮小してカジュアル面談を増やした企業が2割あったとも紹介されていました。入口を書類から面談・面接へ移す動きが、静かに始まっています。
どう考えるか
このニュースを、当塾はそれほど悲観的には受け止めていません。
たしかに、AIを使えば誰でも見栄えのいい書類が作れます。書類で差をつけるという、これまでの就活の前提は崩れました。けれど、崩れたのは「書類で差をつける」という一点だけです。差をつける場所が、書類から面接へ移っただけだとも言えます。
正直に言うと、これは面接対策を専門にしている当塾の立場だから、そう見えるのかもしれません。ただ、長く学生の方を見てきた感覚として、面接で問われるものの本質は、AIが出てくる前と後で、ほとんど変わっていないと思っています。自分の言葉で、自分の経験を、目の前の人に伝えられるかどうか。ここだけは、AIに肩代わりしてもらえません。
むしろ、書類が均質化したことで、面接の比重が上がりました。書類で稼げない分、面接一本で評価される場面が増えるということです。書類が苦手で、これまで一次にすらたどり着けなかった方にとっては、追い風になる可能性すらあると思います。
冷たく聞こえるかもしれませんが、AIに丸投げした人ほど、面接で苦しくなります。先ほどの記事の女性も、3次面接までは想定問答集で乗り切れたと書いていました。逆に言えば、その先、自分の言葉が試される段階で、台本だけでは通用しにくくなる局面が来る、ということでもあります。
就活生の皆さんはどうしたらよいか
では、AIをどう使えばいいのか。模擬面接で学生の方と接していて、感じていることをそのまま並べます。
まず、AIを使うこと自体は、まったく問題ないと思います。むしろ使ったほうがいい場面は多いです。自己分析の壁打ち相手にする、ESの初稿のたたき台を出させる、業界研究の調べものを早く済ませる。こうした下ごしらえは、AIがいちばん得意なところです。浮いた時間を、面接の練習や自分の言葉の確認に回せるなら、使わない手はありません。
問題は、AIが出した答えを、そのまま自分の答えとして暗記してしまうことです。AIの作る志望動機や自己PRは、文章としては整っています。ただ、整っているがゆえに、誰が読んでも引っかかりがなく、その人らしさが消えています。面接官は毎日何十人もの応募者と話しています。同じような滑らかな答えが続けば、すぐに気づきます。自己PRの作り方そのものは、面接の自己PRで差がつく伝え方で詳しくまとめています。
次に、深掘りへの備えです。いまの面接、特に二次・最終面接は、一つの答えに対して「それはなぜですか」「具体的には」と掘り下げてくる傾向が強まっています。台本を暗記しただけだと、二手、三手と掘られたときに、急に言葉が出てこなくなります。AIが書いた文章を覚えるのではなく、その文章の「もとになった自分の経験」を、自分の中で何度も振り返っておくこと。これが効きます。深掘りへの対応は、最終面接で深掘りに崩れない答え方のほうでも整理しています。
それから、AIをどう使ったか、を語れるようにしておくことです。これは少し意外かもしれません。いまの面接では、「生成AIを使っていますか」「AIに任せられない仕事は何だと思いますか」という質問が、業界を問わず増えています。ここで問われているのは、AIを使ったかどうかではありません。使った上で、自分の頭をどこに使ったか、です。AIに下調べを任せて、浮いた時間で何を考えたか。AIの出した答えのどこに違和感を持って、どう直したか。このくらいの粒度で、数字付きのエピソードを一つか二つ持っておくと、強いと思います。
最後に、面接の練習そのものは、AIでは代わりがききません。文章はAIで磨けても、声のトーン、間の取り方、掘られたときの立て直し方は、人を相手に声に出して練習しないと身につきません。本選考まで時間が限られている方は、27卒の就活スケジュールと面接準備60日計画のほうで、優先順位の付け方を整理しています。
面接官の側でも、見るところが変わりました
学生の側の話が続きましたが、面接官の側でも、評価の重心が少し動いています。
派手な新しい質問が増えたわけではありません。昔からある定番の質問の、重みが変わったという感覚です。
たとえば、「学生時代に一番頭を使った経験を教えてください」という質問。ガクチカの変種ですが、「頭を使った」と縛りが入ると、努力量や根性の話だけでは答えが成り立ちません。自分で問題を定義して、仮説を立てて、検証した経験があるか。AIに任せられない部分で付加価値を出せる人かどうかを、短く確かめる問いになっています。
「その結論は、自分で考えましたか」と一言添える面接官も増えました。意地悪な質問ではなく、答えの背後に自分の思考があるかを見ています。AIの答えを暗記しただけの人は、ここで止まります。逆に、AIを使った上で自分なりに咀嚼した人は、追加で掘られても自分の言葉で続けられます。
どれも特別な質問ではありません。ただ、AIで書類が均質化した結果、同じ質問なのに、通過と不通過の分かれ目が、以前よりはっきり出るようになっています。掘られても崩れない答えの作り方は、逆質問の設計とセットで練習しておくと効きます。
終わりに
AIで就活、と聞くと、ずるをしているような、後ろめたい響きを感じる方もいるかもしれません。けれど、当塾はそうは思いません。使える道具を使うのは、当たり前のことです。
ただ、AIで楽になった分、最後に自分の言葉が試される場所として、面接の重みは確実に増しています。書類で差がつかなくなったからこそ、面接で何を話すかが、これまで以上に効くようになりました。
AIに任せられるところは、どんどん任せてください。そのうえで、浮いた時間を、自分の経験を自分の言葉で語る練習に回す。AIをどう使ったかを、数字付きで一つか二つ手元に持っておく。台本を覚えるのではなく、台本のもとになった経験を振り返っておく。いまの環境でやれることは、この3つに集約されると思います。
AIで作った材料を、面接で通用する自分の言葉に編集し直すところは、ぜひ一緒にやらせてください。民間企業面接対策コースや就活相談・メンタルケアコースで、皆さんの持ち札を、いまの評価軸に合う形に整えるところからご一緒します。